異世界からのASMR、密造酒

異世界からのASMR

彼は単身赴任先で最近眠れないんだと、医者に相談するが、睡眠薬はなかなか出してもらえない。パソコン画面の見過ぎですと諭される。

彼は睡眠のおともには、アイマスクと枕がいいときいた。ふむ、枕を新調したのもいいが、アイマスクの心地よい感覚を味わっているとすぐに眠ってしまった。

しかしこの感覚に慣れると、また不眠に陥る

ASMRを寝る前に聞いているんだ。彼は同僚が話していたのを思い出す

そうか、わざわざ購入するのも、億劫なので配信を聞くことにした。 そしてまた睡眠を取り戻すが、また習慣性からまあ効果は弱まる。

その日は一人目の耳かき配信が終わり、自動再生から次の配信へ。

聞いたことのない音が流れ始め、彼はすぐに眠りについた。

「最近不眠を聞かないけれど、どうされたんですか」

「これを聞いているんですよ、ASMR」

「どれ見せてみてください」

これですといって聞かせてみると、怪訝な顔をされる。 これ、なにも映ってないし、聞こえませんよ

彼はその夜も何も聞こえないASMRを聞き続ける。

密造酒

これは、密造酒じゃないか土方が差し出したコップを受け取る どうやって作ったのだろうか、薄く濁った液体、飲むと葡萄の香り アルコールの辛さ。まちがいなくワインができている。余計な風味が一切ない、純粋な手作りのワイン。

「これ、どうやって作った?」 「別に、、、、一緒に仕込むか!。これ、買っておいた葡萄なんだよね」土方は照れくさそうに笑う。」

彼はなんのことはない普通の葡萄を見せてくれた俺は一人暮らしだから果物は滅多に買うことはない。土方の部屋も飾り気はないどころか、散らかっている。きらきら光る葡萄の違和感が気になる。土方が葡萄を洗う、大きめのタッパーにいれてそのままつぶす。部屋に不釣り合いな可愛らしい瓶につめて保存した。

「毎日混ぜてやらないとカビが生えてくるんだ。」 「それで、どれくらい待てばワインになるんだ。」 「そうだな一週間くらいかな。でも、糖分とかにもよるからな。正直分からん。」 「え、じゃああれが最後の一杯だったのか?」

「まあ、いいよ。飲みに行くか。」 仕込んだワインをアパートにおいて

それはいいけれど、いったいどこで酒が手に入るというのか。

着いた店は普通の居酒屋。午後4時だからまだ営業中だ。普通の居酒屋ではもう酒類を提供することはない。営業中。「いらっしゃいませー」店員が元気よく挨拶する。席に着いた俺たちはコーヒーを注文する。 「すみません、○○ひとつ」 「あ、おれも同じのを」

店員がコーヒーを持ってきた。においをかぐとアルコールの香り他の客が突然倒れた。 メチルアルコールではないか。

「おいっ、客をだましてたのか!」土方は気勢をあげる 「ふんっどうせ酒は違法なんだ。エタノールもメタノールも違いないさ」

「この野郎俺を怒らせるとどうなるのかわかってんのかっ」 土方は出されたコーヒー酒を一気飲みする。酔えば酔うほど強くなる。酔拳の使い手である。 俺は蟷螂拳の構えをとる。店主の背は低い。体格差と数でこちら側が勝っている。

「でやあっっ」店主と俺と土方、3人の声が上がった。 しかし俺たちの拳は、彼に届かない。インドネシアのシラットに二人掛かりでもかなわない。

「タバコを持ってるか?」 「え?持ってるけど」 「ライター貸せ」

土方はライターに着火して、思いっきり息を吸い込む。

一気に息を吹き出すと、胃の中から気化したアルコールが引火し、火柱が店長へ突き進む。絶叫を上げ、燃える男。後には黒焦げになった人型が残るばかり。 土方も倒れる。 「すまん。メチルアルコールを飲み過ぎた。もう目が見えないんだ」 土方の土方の視神経はもうだめだ。 「十分戦った。もう帰ろう」 禁酒法の東京に二人の拳闘士が消えていった


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